ジロ・デ・イタリアの詳細プレビューを書く時間がないので、簡単にまとめておきたい。簡単にまとめておきたいというのは、今大会はブルガリアをスタートしたのち、イタリア南部から北上するルートを採るのだが、個々の歴史を語り始めたららに時間を圧迫するからだ。華麗にスルーする。
クイックリンク
放送配信:J SPORTS
配信(一部):J SPORTS YouTube
最新情報:J SPORTS 公式X
大会詳細:J SPORTS 特設ページ
コース図:大会公式サイト(英語)
リザルト:ProCyclingStats(英語)
ジロで争われる主要賞は、全日程の累計走行時間が最も短い選手を表彰する個人総合時間賞(ピンク色のリーダージャージー「マリア・ローザ」が贈られる)、ゴール地点と中間スプリントポイントの通過順位をポイント化して累計を競うポイント賞(紫色の「マリア・チクラミーノ」)、山岳ポイントの通過順位を競う山岳賞(青色の「マリア・アッズーラ」)、個人総合のうち25歳以下のみを抽出して競うヤングライダー賞(白色の「マリア・ビアンカ」)の4つ。最も誉れが高いのは他のステージレースと同じで個人総合だ。
今大会の個人総合の有力選手は、初出場で世界最強ライダーの一人ヨナス・ヴィンゲゴー※1(デンマーク/ヴィスマ・リースアバイク)▽前哨戦の一つツアー・オブ・ジ・アルプスを制したジュリオ・ペリッツァーリ(イタリア/レッドブル・ボーラハンスグローエ)▽同チームで22年大会覇者のジャイ・ヒンドレー(オーストラリア/レッドブル・ボーラハンスグローエ)▽アルプスでペリッツァーリに次ぐ2位となったエガン・ベルナル(コロンビア/ネットカンパニー・イネオス)▽24年のブエルタで総合2位のベン・オコーナー(オーストラリア/ジェイコ・アルウラー)▽イタリア人クライマーのジュリオ・チッコーネ(イタリア/リドル・トレック)▽エース級だらけのチームで安定した成績を残すアダム・イェーツ(イギリス/UAEチームエミレーツ)▽登坂での後退が少ないフェリックス・ガル(オーストリア/デカトロン・CMA CGM)▽中堅クライマーのサンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア/バーレーン・ヴィクトリアス)――など。
選手名は、名前(出身地または国籍/所属チーム)。※1=ヨナス・ヴィンゲゴーハンセンとも。
ヴィンゲゴーは今大会を制すれば、3大グランツールの全てを制することになる。現代のレーサーではアルベルト・コンタドール(スペイン)、ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)、クリス・フルーム(イギリス)に肩を並べる記録となる。(ところで、フルームは今、パフォーマンス分析システム・ベクタの最高イノベーション責任者になっているという情報があった。選手としての引退は表明されていない)
90秒。背中は遠く
そしてヴィンゲゴーの優勝はかなり手堅いと予想される。ジロは山岳が険しいのはいつも通りだが、第10ステージで42キロの長くかつ平坦の個人タイムトライアルがあり、ここで生じる差がそのまま総合優勝に直結する。区間優勝する選手の平均巡航速度を時速53kmとすると、勝者は47分台でのゴールが見込まれる。ヴィンゲゴーは少し遅く48分台後半くらいのタイムを出すと想定されるが、他のピュアクライマーに対して少なくとも1分半程度の差を広げるのは想像に難くない。
他のクライマーたちはどこかで90秒の差を埋め、なおかつ1秒差でもヴィンゲゴーの前に立たなければ勝ち目はない。しかし、セップ・クス、ヴィクトル・カンペナールツ、ウィルコ・ケルデルマンら充実したアシスト(それも献身的なアシストだ)を揃えるチームにいるヴィンゲゴーが、はたして90秒をまるごと失ってしまうだろうか。終盤戦の逆転が起きやすいジロとはいえ、ヴィンゲゴーが肩を落とすシーンをRAI(イタリア放送)が捉えることはなかろう。
なお、ブルガリア人ライダーのエントリーは、現時点(5月5日)ではない。
上記を踏まえ、各賞の優勝予想は次の通り。
個人総合時間賞
ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク/ヴィスマ・リースアバイク)
ポイント賞
ジョナサン・ミラン(イタリア/リドル・トレック)
山岳賞
ジュリオ・チッコーネ(イタリア/リドル・トレック)
ヤングライダー賞
ジュリオ・ペリッツァーリ(イタリア/レッドブル・ボーラハンスグローエ)
各ステージひとことコメント
ブルガリアラウンド:静かなスタート
第1ステージ 147km/平坦
ジョナサン・ミラン(イタリア/リドル・トレック)
3世紀に勃興したブルガリア東部・黒海沿岸にある工業都市ブルガスにゴールする。緩やかな左カーブの先にフィニッシュライン。スプリントトレインと位置取りが重要で、チーム力が勝負を分ける。
第2ステージ 221km/丘陵
区間優勝予想:アンドレアス・レックネスン(ノルウェー/ウノXモビリティ)
バルカン山脈の標高920mの峠を越えて、第2次ブルガリア帝国の首都だったヴェリコ・タルノヴォに向かう。終盤にも丘越えが用意されており、小集団の逃げ切りの可能性がある。なお、ゴール10キロ手前にある山岳はプロフィールマップでは3級山岳、テクニカルガイドの詳細では4級山岳になっている。
第3ステージ 175km/平坦
区間優勝予想:ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ/ユニベット・レッドロケッツ)
ブルガリアの首都ソフィア(標高555m)に至る平坦ステージ。コース途中で標高1350mの峠を通過するが、ゴールからは75キロも離れておりスプリンターが勝負権を失うということはない。
移動日(5月11日)
1週目:風をまとい、風に抗い
第4ステージ 138km/平坦
区間優勝予想:マッテオ・マルチェッリ(イタリア/XDSアスタナ)
イタリア南部に移動してレースが再開する。コースの標高図(プロフィール)は第3ステージに似るが、大半の区間はティレニア海沿い。横風分断作戦は必ず勃発する。サバイバルに強いライダーに勝機。
第5ステージ 203km/丘陵
区間優勝予想:ベン・ターナー(イギリス/ネットカンパニー・イネオス)
今大会はイタリアを快足で北上する。この日は2級山岳を越えて紀元前から栄えてきたポテンツァに至る。ワンデーレースのようなレイアウト。ある程度の登坂をこなせて、スプリント力もある選手に有利だ。
第6ステージ 142km/平坦
区間優勝予想:ポール・マニエ(フランス/スーダル・クイックステップ)
ナポリに向かうレースながら、終盤は海岸沿いを通らず、内陸部を通り抜ける。複雑なレイアウトが組まれており、総合系のチームはリスク回避に動く。最後はスプリンターのみの直接対決となりそうだ。
第7ステージ 244km/山岳
区間優勝予想:ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク/ヴィスマ・リースアバイク)
最初の本格的な山岳ステージかつ今大会最長ステージ。早くも総合争いから脱落する選手が出るかもしれない。ブロックハウスへの登坂は緩急がなく一定勾配。22年大会ではジャイ・ヒンドレーが制している。
第8ステージ 156km/丘陵
区間優勝予想:デレク・ジー=ウエスト(カナダ/リドル・トレック)
アドリア海沿いを北上するレースが組まれた。横風分断も起きる平坦区間ののち、終盤には4級山岳が連続する。この日もワンデーレースのような雰囲気だ。カナダの国内選手権を制しているジーは有力候補。
第9ステージ 184km/丘陵
区間優勝予想:ジュリオ・ペリッツァーリ(イタリア/レッドブル・ボーラハンスグローエ)
スキーリゾートのコルノ・アッレ・スカレ(1級山岳)へ2段階で登っていく。登坂の後半に最大勾配15%が待っており、仕掛けどころは一発のみ。総合勢はある程度大きな塊でゴール付近まで行きそうだ。
休息日(5月18日)
2週目:勝者と“日替わり”の勝者
第10ステージ 42km/個人タイムトライアル
区間優勝予想:フィリッポ・ガンナ(イギリス/ネットカンパニー・イネオス)
リグリア海沿いを走る平坦の個人タイムトライアルが組まれた。42キロの長さがあるものの、直線区間が多く、タイムトライアルスペシャリスト向けだ。注目は総合勢。全体の勝敗に大きく響く一日になる。
第11ステージ 195km/丘陵
区間優勝予想:アルノー・ドゥリー(ベルギー/ロット・アンテルマルシェ)
イタリア北西の小さな街をつなぎ、3級山岳を登ったり下ったりする。イタリアの美景と経済の両方が見え隠れする空撮となる。コース自体はワンデーレーサーにとって逃したくないレイアウトだ。
第12ステージ 175km/平坦
区間優勝予想:ジョナサン・ミラン(イタリア/リドル・トレック)
久しぶりの平坦レースとなった。顕著に横風が吹く区間はなく、道路状況も良好。総合系のチームは一休み。典型的なスプリントレースで、テレビ中継の視聴者も今日は早めの就寝が許される。
第13ステージ 189km/丘陵
区間優勝予想:コービン・ストロング(ニュージーランド/NSNサイクリング)
延々と平坦区間を駆け抜けたのち、小さなコブを越えてマッジョーレ湖畔のヴェルバーニアにゴールする。上位はミラノ~サンレモに似る顔ぶれとなるだろう。今大会もいよいよアルプスの麓に至る。
第14ステージ 133km/上級山岳
区間優勝予想:テイメン・アレンスマン(コロンビア/ネットカンパニー・イネオス)
133kmの短距離の中に平坦区間はほとんどない。アルプスのクセの強い登坂をこなし続けて、34年ぶりに登場のピーラに向かう。ヴィンゲゴーが守りの戦いをすれば、最後に飛び出したライダーが両手を突き上げる。
第15ステージ 157km/平坦
区間優勝予想:カーデン・グローブス(オーストラリア/アルペシン・プレミアテック)
ポー平原西部を北上したのち、大都市ミラノの市街地を4周回するスプリントステージが組まれた。言うまでもなく前半戦は横風との戦い。終盤は市街地特有のリスク回避が求められる。チーム力が物を言う。
休息日(5月25日)
3週目:優しさに包まれた残酷
第16ステージ 113km/上級山岳
区間優勝予想:ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク/ヴィスマ・リースアバイク)
休息日明けの山岳コースだ。今日は全行程がスイスで行われるレースで、最後は約12キロで平均勾配8%の登坂に挑む。アルプスに深く刻まれた美しい渓谷地帯は残酷に微笑む。今日は敗者が決する。
第17ステージ 202km/丘陵
区間優勝予想:ハビエル・ロモ(スペイン/モビスター)
最終盤に6キロの登坂が待ち構えている丘陵ステージが今日の舞台だ。前日は厳しい山岳ステージ、明日は今日よりは与しやすい平坦ステージだと考えれば、今日は逃げ集団に有利に働く。
第18ステージ 171km/平坦
区間優勝予想:オールイス・アウラール(ベネズエラ/モビスター)
アルプス南麓を西から東へと走っていく。ゴールの10キロ手前に4級山岳があるが、このジロをこなしてきたスプリンターは大半が生き残るだろう。残り1キロで2度の90度ターン。荒れた展開も予想される。
第19ステージ 151km/上級山岳
区間優勝予想:アレクサンドル・ウラソフ(ロシア/レッドブル・ボーラハンスグローエ)
レース中盤にある標高2233mのジアウ峠に今大会最高標高地点の特別賞(チマ・コッピ)が設定された。終始テクニカルなレースとなり、今大会の最難関ステージと言っていい。ゴールは約20キロの長い長い下り坂を経て登り返した先にある。前方で区間優勝争い、その後ろで個人総合の争い、さらに後方でタイムアウトとの戦いが起きる。
第20ステージ 200km/山岳
区間優勝予想:ジョナタン・ナルバエス(エクアドル/UAEチームエミレーツ)
ちょうど200キロのレースは、忘れ物を取りに行くステージだ。区間優勝がないチームを含めた大集団の逃げが発生する。ゴールの登坂は距離14.5キロ、平均勾配7.8%。個人総合は秒差であればひっくり返る。
第21ステージ 131km/平坦
区間優勝予想:ジョナサン・ミラン(イタリア/リドル・トレック)
ジロ・デ・イタリアは今年もローマでの大団円。序盤は勝者を讃えるパレードとなる。ローマ市街に入りコロッセオなどの周辺を8周回する最終区間でレースが再開。晴れていればスプリンターがハンドルを投げ合う。
